2016年4月28日木曜日

多読の授業は忙しい。

多読の授業を初めて2週間が過ぎました。子供達はめいめい本を手に取り、音読をしながら読んでいきます。

多読の授業と言うと、「生徒に本を勝手に読ませて、先生はすることがない。」と思ってらっしゃる方もいらっしゃると伺ったことがあります。これはとんでもない認識の誤謬です。

授業が始まると、生徒達の様子を見ながら、教室中を行ったり来たりして、生徒達が躓いていないか、読み方が分からない単語がないか、熱中できているか、など、様子を観察しながら徹底的に個別指導を入れていくので、休む暇がありません。

気がつけば50分の授業が終わっていた、というような具合で、とにかく生徒達一人一人が集中して本を読む時間を作ってあげて、躓いた時に寄り添い続けることが大切です。

初めての授業から2回目、昨日の多読の授業のポイントは以下の2点でした。

「レベル1+からレベル3までの本を読破するつもりでやろう。」
「ゆっくりじっくり絵を見て、どんな様子か、何をしているところか、絵に何が書かれているかを見よう。」

文章や単語の意味が分からないとき、辞書を引いたり調べたりは一切しません。絵を見ながら、その単語が使われている流れや様子を見て、意味を類推していく作業の繰り返しです。

子供達が自分自身の力で意味や語義に到達していくお手伝いをするのが先生の仕事でして、これは喩えて言いますと、有機栽培や、自然飼育に似ています。とにかく、気が遠くなるような手間が掛かるのです。

多読の授業、英英辞典の活用、絵本の読み聞かせ、毎回の授業でのスモールトーク(スピーキング活動)などはすべて、結果を急いでしまったり、成果を数値化するような指導ではなく、生徒達が自らの力で、「英語を英語のまま理解する回路」を育てていく指導法です。

これをやったからすぐに模試の成績やテストの結果が出るわけでもありませんし、検定に合格したりするものではありません。

一方で、自然な方法で育てられた野菜やお肉がとてもおいしくて、体にもとても優しいように、有機栽培のような姿勢で子供達を育てていくと、子供達に笑顔が溢れ、毎日の授業の中で、子供達は生き生きとします。

生徒達は「英語をやらされている」「英語の勉強をしなければいけない」「宿題や再テストがとても多くきつい」など、威圧感や圧迫感を感じることがなくなります。自ら学ぶ力をつけた子供達は、人からやらされて即戦力を身につけた子供達よりも強く逞しいのです。

この手間を惜しむと、子供達に自ら育つ力はつきません。子供達に対して教師が取る態度は、「愛情溢れる母親のような温かさと忍耐を持って、子供達を見つめ、励まし、受け止める」ことです。子供達はいろいろな間違いをします。失敗もします。その時に我慢して教えない。徹底して子供達が気づくまで待つ。気づく為のヒントはあげる。でも、答えや正解をけして教えない。

若い頃の授業を振り返ると、子供達にトレーニングをさせ、徹底して単語帳を使って鍛え、文法問題を死ぬほど解かせて、これで子供達は鍛えられた、と自己満足の世界に浸っていたんだな、とわかり、とても恥ずかしい気持ちになります。

追い立てるような指導をしなくても、子供達は伸び伸びと学びます。自ら気づきます。躓いている友達と励まし合って共に力をつけていく流れができていきます。

そういう授業をするのに、20年の時間が掛かりましたが、今こうして子供達が生き生きと授業中に活動をしたり、言われなくてもどんどんオックスフォードの英英辞典を引いて語義をノートに書き、イラストを添え、気づきや発見のコメントをつけている姿を見るのが幸せで仕方がありません。多読の時に生徒達と読み聞かせをしあったり、絵の説明をお互いに英語で言い合うことがとてもうれしい。こんなに子供達が生き生きしている、自分は20年間、何を教えてきたんだろう、そんな気持ちに気づかせてくれます。

話が長くなりました。子供達の多読の様子を見て下さい。すてきな時間を与えられている恵みと幸せに、感謝しています。

易しいレベルの本を追加しました。

生徒と一緒に1ページごとに読み聞かせをし合いました。

夢中になって多読に取り組む子供達。高校一年生です。



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